書評:『嘘だらけのヨーロッパ世界史』岸田秀

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20070904/133983/

 この本は岸田秀の最新刊で、主に英国人歴史学者マーティン・バナールの『黒いアテナ』を解説しており、この『黒いアテナ』にはギリシャ文明がアジア・アフリカ文明の影響下に生まれたと書かれているそうです。
「ヨーロッパの人間は、アジアやアフリカを植民地にして、悲惨の極地に追い込んだ非常に残酷な民族である。その残酷さは他に類を見ない。なぜここまで残酷なのか。それは、遥か遠い過去に、白人が黒人に差別されたからであろう。色が白いのを理由に差別され、豊かなアフリカ大陸を追い出された。」

 『黒いアテナ』は学術書なので、大著であることを厭わなければこの内容の詳細を知ることができるのでしょう。歴史って議論し尽くされているように見えて、ある日ふと全てを覆すような遺跡や証拠が現れてくるから興味深いです。現在でも、例えば政治の世界で各政治家によってこの数日間に起こった事の語り口が異なるように、事実は一つのはずなのだけれど、視点が違えば歴史は何層にもなり得る。しかし、白人はかつて黒人に差別されたから差別し返した、という論理はキリスト教と相容れないように思われるのですが・・・どうなのでしょう?歴史学は多分、一つの事実を追究するものではなくて、多くの説を混在させておくもののように思います。ただ、政治的に歴史認識が云々ということになるとややこしくなるのですが。